半村良の、晴れた空であったか、短編の一つであったか思い出せないが 詳細を覚えていないのに、私の中に根付いたシーンがある。 戦時中の東京で、爆撃に遇う母と息子。炎に巻かれた母を息子が見つける、と 母は、「来るな、来ちゃいけない」と仕草であったか、叫んだのだったか、息子に伝える。 そうして、息子だけが生き延びる。
もう一つ、ハインラインの作品の中にも、同じように覚えているものがある。 『ある養女の話』だと思うのだが、定かでない。 主人公ラザルスが、火事で焼け落ちそうな家に行きあう。 もう助けようもない程に燃え盛る家。その窓から、ラザルスに投げ託された、幼い子供。 子供一人が、助かる。
どちらも”親”が本来持つ子供への想いであるように、 現実の親より力強く、そのシーンが焼きついている。 ”火達磨の親”は、子供が逃げ助かることだけを、強く望んでいるものだ、と。
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